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「君は誰、なの?」
「ふん、良い質問だ。…最後に一度だけ猶予をやろうか。
俺が話す事はお前にはどうしようもない事だろう。
どうしようもなく最悪な事だろう。それでも聞きたいか?」
「…」
「そうか、頷くと言うのなら俺は話をやめはしないぞ。
…そうだな、まずは俺が誰かと言うことを話すとしよう。
俺の名前は巡。お前がいつも潜る影の世界の更に奥に住んでいる、あの世界の主だ。
良く分からなければ神、とでも形容しておくか。
…何を驚いている?影に潜ったり操る能力はお前だけのものではないぞ。
いや、むしろお前の方が模造品の能力と言うべきか、お前はあそこではイレギュラーで異質なのさ。
何を言っているのか分からないという顔をしているな。
では次の話をしてやろう。お前についての事だ。
俺はお前の事をずっと見てきた。森に居た時代、追われた時代、拒絶した時代、そして今の今までずっとだ。
俺と同じ力を持つモノがどう生きていくのか興味があった。一種の実験だった訳だ。
分からないか…なぁ、虚夜?その名前は誰から貰ったものだ?
覚えていないだろう、むしろ、最初はそれしか知らなかった筈だ。
なにせ、それは俺がただのひとつだけお前に与えたものだからな。
…くく、何だ、折角の再会だというのに随分な視線を送ってくれるじゃないか。感涙してしまうな。
そう、俺はお前の親だよ。
いや、親というのは実際は少し違うか。
お前は俺の力から勝手に生まれたんだ。発生したと言うべきか?最初は俺も驚いたものだ。
影を操る力も、影に潜る力も、全部全部俺から受け継いだものだな、やはり俺よりは弱いが…。
…お前は聡いから分かっているだろうが、あえて言ってやろうか
お前は人間じゃないんだよ、虚夜。
ある意味ではお前を森から追い出した連中は正しかったわけだ。
お前は、正真正銘の化け物なのさ」
「…っ!」
「信じるか信じないかはお前の自由だ。好きにすれば良いだろう。
俺が気になっているのは、お前がこれからどうするかだからな。
幸せになるか、不幸になるか、
お前の物語はどういうものになるのか…。
それだけ見せてくれれば、俺としては満足な訳だ
だから、俺がお前に贈れる言葉はひとつ、」
「もっと暗闇の中であがいてみせてくれ、なぁ、我が娘よ?」
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親子の邂逅と巡の暴露長話のお話です。もうやだこの親父()
虚夜としては信じたくない話をつらつらと並べられた訳なのでなんというか色々混乱してそうで…。
一番のダメージはやっぱり普通の人間じゃないって言い切られた事でしょうか。
多分三角座りでしばらくだんまりになっちゃいそうです…。
一方巡の方はこれからどうなるのか完全に楽しんでます。予定とは変わったけどそれでも良いかとか思い始めてます。
最後に娘と言っていますが、実際はそんな情は欠片ほども持ち合わせていません。
ちょっと巡の詳しい設定も置いておきますね!
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■巡(めぐり/ダ.ー.ク.ラ.イ.♂寄)についてうんぬん
影の世界の主にして神様。その生活の大半を影の中で過ごしていて、外の様々な場所や人を観察している。
時折気まぐれ程度に地上に出ては、お気に入りの観察対象にちょっかいをかけたり、
行き会った人を眠らせて悪夢を見せ、主にそれを主食にしている。
悪夢は巡の気分によって様々な種類のものが見せられるが、運が悪いと発狂するような夢を見せられる事もある。
悪夢が酷ければ酷いほど巡にとっては美味な味らしく、夜な夜な数人の被害者が出ている。
かなりひねくれた性格をしていて、自分が楽しければ他人がどうなろうと構わないと割り切っている所がある。
こんな性格ゆえに神様間でも評判が悪く、往々にして嫌われている。
(ただ本人は一向に気にしていない)
元々世界の影から生まれた存在で、性質もそれに近い。
不老不死で自由自在に影を操り、人を眠らせ悪夢を見せる能力を持つ代わりに、滅法日の光が苦手。
昼間は人や建物の影以外には出てこれないため、大体夜に活動的だったりする。
また、月光は体質的には平気なものの、個人的に嫌っているらしい。
偶然自身の力が漏れだして生まれた、虚夜、影璃、言無という三人の子を持つが、
本人は全くもって親子という感覚を持っておらず、むしろ面白そうな玩具程度に見ている。
子供達が自分と同じ性質を持つと知るや、全員を外へと放り捨ててしまった。
理由は、自分と同じ性質を持ったまま彼らがどんな人生を送るのかを観察したかったから。
以降、ずっと彼らの人生を影の奥底からにやにやと見続けている。
巡いわく、自分の物語(人生)はもう終わっているもので、だからこそ他人の物語を覗き見るのだ、とのこと。
以前は巡も普通に人と接して外の世界に積極的に身を置いていたものの、
その昔々に友と思っていた人間に手酷く裏切られて瀕死の重傷を負わされ、その時に自分の外で生きる人生は終わったと思っている。
ただ、時折いつも張り付けているにやにやとした笑みすらなくして青空を影の中から見上げていることから、
外の世界に対してまだ羨望や憧憬を感じている節もある。
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