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あなたとはどこかで会った気がする、と感じたのが最初だった。
初めて会った筈なのに、なぜなのだろうか?
その微笑みが、ちょっと冷たい体温が、既視感を持ってわたしに染み渡る。
遥か昔、ずっとずっと前の事、気が遠くなるくらい、何度も何度も。
気だるげな声、優しい声、真剣な声、
それと、あれは、
泣き声?
かちん、と何かが嵌まる音がした。
記憶が巡る。忘れていたことも、知るはずの無いことも、
全部まとめてそれはとてもめまぐるしくて、目眩を起こしてしまいそうなほど。
悲劇、喜劇、出会いと終わりと、そして結末のない未来。
何回、何十回、何百回、もしくは何千回、繰り返しているんだろう?
針の飛んだレコードのような、それは終わることの無い繰り返し。
いつかのわたしは幸せだったし、いつかの私は不幸だった。
このゲームは何回も何回も何回も何回も何回も始まって、そして終わっていないのだろうか。
でも、もう全てが繋がった時には遅すぎたし、
きっと遡って気付いたとしても私に出来ることはすこし、ほんの少ししかなかっただろう。
そのほんのすこしの欠片でも、今、時間が許す限りは、
「ねぇ、ハイロカ」
わたしの反転した視界は空を仰いでいる。視界の中には、彼が居た。
ぬめった血の付いた手を彼の頬に添える。少し血色の悪い顔に、鮮やかな赤がついた。
悲しそうな悔しそうな泣きそうな顔の彼に、わたしはそっと微笑む。
「わたし、あなたのことが大好き。愛してる。ずっとずっと、愛してる」
「世界が変わってもまた繰り返してもこれだけはきっと変わらないと思うの」
「わからなくてもいいわ、でも、次は、」
「もっとあなたと、幸せになりたいな…」
視界が滲む。ほんとう、もっと早くに気付けば良かったのに。
そうすれば、もっともっと何回もしつこいくらいに、
あなたに、好き、って言ったのに。
(白む視界と、見えない未来と、いつかのあなたと、いつかのわたしへ、
どうかどうか、あなた達がしあわせになれますように)
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白黒ループの話を聞いて、いつかのどこかの世界のハイねね主従。
この世界でもねねはハイロカさんの事が好きで、きっと両想いだったけれど、
ゲームの途中で重症を負ってしまって、そのまま死亡脱落する寸前の彼女のこと。
意識が薄れて走馬灯みたいなものを見る中で、今までの世界の記憶とリンクして繋がってしまって、
ああ、と全ての全てに気付いたのは、もうとても手遅れの時だったという妄想です。
彼女の後悔は好きだという気持ちをハイロカさんに指先ほどしか伝えられていなかった事。
そして、次の、もしくはずっと先の自分達へ、幸せになって欲しいと願いながら亡くなりました。
長い長いループがあるのだとしたら、きっとこういうケースもあったのではないかな、というお話。
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