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【白黒】手紙の束のお話



 
(古びた手紙の束が置いてあった。
結構古いものから新しいものまで、丁寧に封筒の中で折り畳まれているようだ)
 
 
 
 
「あるじへ
 
あまりきれいなじではないけれど、
これからしばらく、あなたにてがみをかこうとおもう。
 
とつぜんあなたはきえてしまったから、
つたえたかったことがつたわってるかわからないから、
だから、これですこしでもとどけばいいとおもう。
あなたはしあわせだったろうか。
あなたはわらってたびだてただろうか。
おれは、あなたのちからになれただろうか。
あなたのたびだちを、しっかりみおくれなかったのは、
もりすぎもくれまつもかなしんでいた。
おれも、さいごにちゃんといえなかったことばがある。
 
いってらっしゃい、ひめ。
おれはずっと、あなたのかえれるばしょであるから。
だから、たびがおわったらかえってきてほしい。
それまでには、いっぱいこっちのことをべんきょうして、
りょうりもうまくなって、もっとつよくなって、
あなたをまもれるようになるから。
あなたがしあわせになれるようにするから。
どれだけじかんがかかっても、
まってる。
 
どうか、げんきで。
あなたのたびがいいものでありますよう
 
 
かぐ」
 
 
 
 
 
「姫へ
 
16回目の手紙になる。
こちらはあい変わらずだ。なにかあったといえば、この前紅松が姉と手合わせをして、
すこし道場をこわしてしまったくらいか。オノデラがなんだかなげいていた。
 
季せつもあれからひとめぐりして、もう秋になった。
秋になると、なんとなくたき火をしてやきいもでも食べたくなる。
むこうにいた時のように、おちばを集めて火をつけて。
 
あなたはどうしているだろう?
そちらは良いところだろうか。
苦労はしていないだろうか。
こちらの事は心配いらないから、
どうかそちらでも元気でいてほしい。
 
(消ゴムで消された文字が、うっすらと残っている)
 
あなたがいないと、やはりさびしい。
ぽっかりと穴があいたような気持ちは、なんとよべば良いのだろうか?
あなたなら、知っているだろうか。
 
 
かぐ」
 
 
 
 
 
「姫へ
 
きっとこれが最後の手紙になるだろう。
あなたが、帰って来てくれたから。
 
旅はどうだったろうか。
きっとその話を聞くことは出来ないけど、今はそれでも構わない。
 
きっとあなたは、昔のことを全て忘れてしまっているだろう。
 
でも、俺は覚えてる。あなたと桜を見たこと。お祭りにいったこと。
文化祭を回ったこと。皆で踊ったこと。
あなたに叱られたこと。笑いあったこと。泣いたこと。
主の事は忘れない。消えさせないから。
だから姫、あなたはあなたのままでいい。
なにも思い出してくれなくても構わない。
あなたはあなたとして、幸せに生きて欲しい。
ただそれだけが、俺の望みだから。
 
 
 
おかえりなさい、姫。
 
 
 
霞紅」
 
 
 
 
 

******

霞紅の手紙のおはなし。
現実世界に行く際、姫さまが成仏してしまってから霞紅は定期的に手紙を書き続けました。
今の話。昔の話。自分の思い。言えなかった事。言いたかった事。
最初はひらがなしか使えませんでしたが、自分で勉強して2.3年で結構な数の漢字を覚えたようです。
最初の手紙は姫さまが成仏して間もなく、
最後の手紙は姫さまが転生して帰って来てくれた時に書きました。
今ではその届かなかった手紙の束はそっと大切に、どこかの棚の中に仕舞われているようです。

 

 
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