【昔の事】
本名は千紗万華(せんさ ばんか)。
幼少期はアヤカシと共に生きるような田舎の村で暮らしていたが、母親と今の父親の再婚を切っ掛けに九十九松へと移り住んだ。義父の家は軍警家系であり、菲太梅もその教育に沿って育てられる事になる。アヤカシと共に生きて来た時と九十九松の空気のギャップに戸惑いながらも、両親に認められるように勉強と修行を積み、期待に応えるように軍警の職に就いた。
先輩にも恵まれ成績自体は上々だったが、幼少期の思い出や生来の性格の柔らかさもあってかアヤカシに辛く当たらなければならない仕事には悩みも多かったらしく、良く折檻で怪我をしたアヤカシの手当をこっそりしていたようである。
なお、義父側に義兄がおり、そちらも軍警職で立身出世している。家の後継はこの義兄がする予定で、菲太梅はそこに関してだけは気を張らずに居れたらしい。
~10歳で外から九十九松に引っ越す。
17歳で天乃尾に入隊。
23歳で任務先にて失踪。
30歳で現在に至る。
【呪いについて】
顔を無くす呪い、ではあるが、同時に「相手を失くす」「自分を失くす」呪いでもある。
「相手を失くす」というのは、顔の暗闇を見る事で相手の正気を奪うという事。菲太梅の黒い顔を見た時、まず最初に見た人自身の何の飾り気もない、良い事も悪い事も全て曝け出したそのままの顔・姿を映し出す。それに耐え切れずに顔を背けようとした時に、目を離させない自我や理性を削ってしまう暗闇が見えるようになるという。心を強く持って上手く扱えば自身の本当の姿を知る事も出来るが、途中で菲太梅や第三者の静止が入らない場合は十中八九正気を失うことになるので十分な注意が必要となる。
「自分を失くす」というのは菲太梅自身の記憶、自我がなくなっていくという事。万華だった時の事、今の自分の事など、ゆるゆると様々な事を忘れていく呪い。こちらは進行性の呪いではあるが、その都度「昔の事を思い出す」「自分の事を思い出す」事で予防が可能ではある。自分の全てを無くしてしまえば呪いによってニンゲンからアヤカシとなり、いつしか怪談という概念になって他人の顔と自我を奪い続ける骸のような存在と化してしまう。
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